特集 雷の被害を防ぐ
~希少金属モリブデンの避雷器への応用とあゆみ~

2010/07/08
有限会社 ベクトル 営業部

はじめに

 従来の避雷器はサージ耐量が大きく、続流がなく、静電容量が小さく、応答速度が速く、などが大きな要素でありますが、それに加えて今までにない自復作用を持つ避雷器をご存知でしょうか。それはモリブデン避雷器と云い思わぬことから偶然に発見されたサージ吸収素子を搭載した次世代型避雷器です。
  モリブデン避雷器は水処理設備、防災設備、情報通信機器、制御機器など様々なところで採用されています。

1.希少金属モリブデン

さて、モリブデンとはどんな金属なのでしょうか。
主な特性を見てみたいと思います。
・モリブデン(Mo)は、銀白色の非常に硬い金属である。
・融点は、2620℃と高く容易に溶融しにくい。
・電気抵抗率が低く、銅に匹敵するほど非常に電気を通しやすい。
・常温では耐酸性に優れた材質である。
モリブデンは上記のような特性を持っており、その特性を生かし電子基板や液晶パネルの製造ラインなどで利用されています。

2.モリブデンの避雷器への応用

 かつて避雷器の素材としてアルミ、チタンなどの避雷器がありましたが寿命が短いなどの理由で衰退し、今はギャップ式、酸化亜鉛式、シリコン半導体式によるものが主流とされています。
  モリブデンは高価で加工も難易度が高く入手も困難な鉱物で着目されていませんでした。 1984年ごろ四国高知の大森清太氏が、おこなったある実験がヒントになりモリブデン避雷器は発明されました。大森氏は実験中ニクロム線の代わりにモリブデン線を使用して電流を流したところ赤熱したあと紫白色の煙がゆらゆらと上がって間もなく白色の灰となることを発見しました。この灰すなわち酸化モリブデンMoO3を抵抗測定すると高絶縁性の半導体であることが判明しました。この発見と常に避雷器に問題意識をもっていたことが重なり、モリブデンの表面にMoO3の皮膜を作れば避雷器に必要な弁作用ができるのではと思いつきました。この弁作用(Valve Action)というのは雷サージのみ大地へ逃がして元の電源から送られてくる商用電圧あるいは、送信機で発生する電波信号を逃がさないというような弁の働きをします。この弁作用がうまくいかないときの現象を続流(Dynamic Current)が流れるといい、うまくいったときの現象を無続流といいます。
  電圧電流特性も本来、ギャップ式にない特性で、放電開始電圧に達成するまえでも微少に放電することもわかり、これが図1のように自然界で起きているようなリーダー放電から始まり、より電位が高くなるとそのイオン化された道で落雷するのと同じように、その橋渡しとなる媒体が酸化モリブデンなのです。

自然界の雷放電発生パターン
図1図面拡大

モリブデン素子は図2のように複数の円筒状ペレットを並べた構造で放電先が線接触で静電容量が小さく、円面であるため放電切れがしやすく続流遮断する効果もある。更に酸化された導体部分Moの表面はでこぼこで放電しやすくなっているので避雷器としての機能は充分備わっています。

自然界の雷放電発生パターン
図2図面拡大

3.応答性能

 保護しようとする機器が壊れてから避雷器が働いたのでは何の役にも立ちません。静電容量が小さいことは高周波を通し易く、ギャップ式などは約3pFですがモリブデン避雷器は約1pFで大差なく超高速で動作するといえます。また構造上動作電圧を高くする場合、Moペレットを積み重ねるためコンデンサーを直列にするのと同じで静電容量は更に小さくなり、イオン化された橋渡しとの相乗効果で速度を早めることになります。

4.構造と動作

 酸化絶縁被膜を形成させマイクロ単位で電極ペレットを接近させた構造で、図3のように電子機器のラインと接地間に設置する。一般のガス封入によるギャップ式と違い、電極Moの間には特性をもった高絶縁体があり、極微量の電流から放電をはじめ(Junction Leader)、いつ大きな雷サージが来ても速やかに通過できるように、常時準備をしている状態にあります。また、酸化被膜は破壊/再生の自復をおこない、弁作用のようにエネルギーを図4のように一瞬に放出させ再び遮断する理想的な動作です。

自然界の雷放電発生パターン
図面拡大

5.雷害対策

 今年の日本の梅雨入りは例年より遅く、6月半ばで雷害の報告が入ってきました。高価な計器類を備えながら、雷に対しあまりに無防備な施設が多く見られます。雷から情報機器を守り、安全・安心な運営を安定稼動するために先ず、侵入経路や通信先の全体を把握して対策を講じる必要があります。 建物や設備により違いはありますが、先ずは電源ラインの対策、通信ケーブルの対策、など外部との繋がりがあるラインからおこなうことをお勧めします。次に接地線が重要な対策ポイントとなります。

 さらに次の項目の改善をおこなうことをお勧めします。

 避雷針のアースと一緒にしないこと、避雷器が侵入路となる場合があるので
  出来るだけ離しましょう。5m~10m離すだけでも効果があります。
 ツイストペアーのシールド線が有効です。
 非接地シールド端側には酸化亜鉛式ZnOをつけることで、浮遊容量による
   充電電圧の放出を制限し、機器への侵入を阻止します。
 機器に適した避雷器が備わっているか、また劣化していないか定期的に
   チェックしてください。

自然界の雷放電発生パターン
図面拡大

モリブデン避雷器の雷対策別製品紹介

自然界の雷放電発生パターン

①電源からの雷サージ対応 
分電盤に大容量電源用避雷器を設置する
設備にもよりますが屋内用で10kA~20kAで良いでしょう。
・交流電源用避雷器 VM-2P、VM-3P などがあります。

自然界の雷放電発生パターン

②電話・ファックスへの雷サージ対応
電話回線からの侵入も電源に次いで多いとされています。
・電話回線用避雷器 VM-TLなどがあります。

自然界の雷放電発生パターン

③アンテナからの雷サージ対応
雷も電波です。高く掲げているため当然侵入しやすい状況にあります。
・同軸ケーブル用避雷器 VM-AT-BCなどがあります。

自然界の雷放電発生パターン

④監視カメラや映像設備へ雷サージ対応
高所に取り付けてある場合は侵入しやすい状況となります。
小容量の電源用と組み合わせて設置してください。  
・監視カメラ用避雷器 VM-CX-BCなどがあります。  
・小容量電源用避雷器 VM-200などがあります。

自然界の雷放電発生パターン

⑤コンピュータへの雷サージ対応
  LANケーブルを外部経由で引き廻している場合もあります。  
・LAN用避雷器 VM-8Dなどがあります。

  その他、芝生に散水するための電磁弁のようなケーブルやセキュリティーで 窓などに使用するスイッチなどは、雷の電磁波を受信するアンテナ状になっているため受雷しやすいので避雷器で対策をしておくようお勧めします。何れも侵入路は様々ですが、接地の取り方も対策の効果を左右します。 大切なものは機器?その時のデータ?それとも逸早く現状復帰させること?などにより避雷器の 必要性や取り付け優先順位を決めると良いでしょう。
最近の半導体IC使用による弱い電子機器を守るため雷害対策も日進月歩のようですが 、
これからが雷の本番です。

問い合わせ 関連リンク
◆ 有限会社 ベクトル
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